本稿をご覧の皆さんは放電加工がどういったものかについて知っているでしょうか。
放電加工は、切磋加工や研磨加工とは全く異なる加工方法で、電気のエネルギーを利用します。
今回は、放電加工について紹介します。
メリットも併せて紹介するので、ぜひ参考にしてくださいね。
□放電加工とは
ここではまず放電加工がどういった加工方法なのかについて紹介します。
放電加工とは、電極と工作物の間に連続的に放電を発生させます。
そして、その放電を利用して工作物を溶かしながら目的とする形状へと加工を行います。
目的の形状へと加工する際に、不要となる部分を除去しながら加工を行うため除去加工法に分類されます。
ちなみに、この加工では工作物を加工液の中に沈めながら作業を行います。
放電により工作物は高温に熱せられ、溶け出します。
溶け出した工作物が加工液を沸騰させることで小爆発が発生し、不要な部分が除去されるというメカニズムです。
電極の形状によっては複雑な形状の加工を一度で行うこともできるため、少量の生産に向いています。
電極には、電気を通しやすい銅やグラファイトといった素材が使われることが多いです。
□放電加工の電極について紹介
ここからは放電加工に使用される電極について紹介したいと思います。
放電加工の電極とは、放電を発生させる部分のことを指します。
電極は、放電を繰り返していくうちに消耗するため、常に新しい状態をキープする必要があります。
また、電極の材質によっても効果が変化するので、その特徴についても紹介します。
*電極消耗について
消耗した電極をそのまま使用していると、工作物が目的の形状の加工できなくなることがあります。
こうした事態を防ぐためにも、電極は新品の状態をキープする必要があるのです。
電極は新品の状態を維持するのが前提となっているため、古い素材はどんどん巻き取られていきます。
そして、常に新しい素材で放電をしています。
*電極の材質について
電極には、電気を通しやすい素材が使われます。
単に電気を通しやすいといっても、さまざまな素材がありますよね。
使用する素材によっても、その効果が変化するので、種類ごとの特徴について紹介します。
・銅の電極
こちらはコストが安いというのが大きな特徴で、採用率が最も高いです。
電気抵抗が少なく、熱伝導率が高いというのも魅力の1つです。
問題点としては、耐熱性の低さが挙げられます。
・グラファイトの電極
こちらは熱にという特徴があります。
素材が熱の影響で変形するのを防げるため、扱いやすいです。
一言でグラファイトと言ってもその中にも数多くの種類が存在するので、加工する素材に合わせて選択するのがおすすめです。
・タングステンの電極
こちらは熱伝導率の良い銅と合わせて使用されることが多いです。
超合金を加工する際には大量の電極を消耗してしまうのですが、タングステンであれば消耗を抑えられます。
そのため、超合金を加工する際に重宝されます。
電極に使用する素材によって特徴が変化することはわかっていただけたかと思います。
そのため、加工する素材に合わせて適切なものを選択することが大切です。
それぞれのメリットを最大限活かしていけば、コスト削減にもつながるでしょう。
□放電加工のメリットとデメリット
最後に放電加工のメリットとデメリットについて紹介します。
まずはメリットから見ていきましょう。
メリット1:素材の硬さに関係なく加工ができる
電気を通すという条件さえクリアすれば、硬い素材も難なく加工できます。
強い強度が求められる部品を製造する際に役立ちます。
メリット2:複雑な形状でも高精度で加工ができる
1ミクロン単位という非常に高い精度で加工できます。
切削加工と比較すると、その違いは明らかですよね。
ネジ切りやスパイラルといった形状も問題ありません。
メリット3:工作物への負担が減らせる
加工時に電極と工作物は接触しません。
そのため、工作物への負担を大きく減らせます。
工作物への負担を減らせるということは、工作機械の負担も少なくて済みます。
つまり、他の加工方法と比較すると工作機械も壊れにくくなるでしょう。
次は、デメリットについて見ていきます。
デメリット1:加工に時間がかかる
1回の放電で加工できる量が非常に少なく、加工の速度も毎分2〜5ミリです。
デメリット2:コストがかかる
放電加工は機械自体のコストが非常に高いです。
また、電極も消耗品のため、全体的にお金のかかる加工方法と言えます。
デメリット3:電気を通さない素材は加工できない
放電を発生させ、その熱によって加工する方法です。
先ほども紹介しましたが、電気を通す素材である必要があります。
電気を通さない素材は、放電が発生しないので加工ができません。
□まとめ
今回は、放電加工の基礎知識とメリットデメリットについて紹介しました。
放電加工のメリットとデメリットを踏まえた上で、導入を検討していただければ幸いです。
そのほか工作機械のことでお悩みの方は、お気軽に当社までお問い合わせください。