板金加工の中で最も基本的な加工である曲げ加工についてご存知でしょうか。
曲げ加工とは、作業者の能力や技術が加工品の精度を左右します。
今回は、曲げ加工が何なのか、設計・図面における限界と注意事項について紹介します。
板金加工の導入を検討している方は、ぜひ参考にしてくださいね。
□曲げ加工とは何かを紹介
先ほど、曲げ加工は作業者の技量によって加工品の精度が左右される方法であることを紹介しました。
しかし、これだけでは何のことかわからないですよね。
ここからは曲げ加工についてもう少し詳しく紹介していきます。
曲げ加工は、名前の通り材料を曲げることで変形させて、任意の形状に加工する方法です。
金属というのは、一定以上の力を加えて変形させると元の形に戻らない性質があります。
この性質を塑性と呼びます。
曲げ加工は、この塑性を利用した加工方法です。
原理としては、プレスブレーキやプレス加工機といった機械に金型を取り付けて加工します。
金型は、上と下で分かれており、その間に材料を設置して力を加えます。
上型と下型で挟み込むようにして変形させます。
一見挟み込むだけの簡単な作業に思えますが、実際はとても難しいのです。
材料の硬さや引っ張り強さといった特性や厚み、金型の形状などの調整が大変です。
金型を用いて所定の形状に金属をプレスしても、曲げ加工ではプレスの荷重を解除すると、素材の持つ弾性によって、せっかく曲げられた形状が一定量元に戻ってしまいます。
この現象をスプリングバックと呼びます。
これらの要素を考慮しながら加工をする必要があります。
曲げ加工に使われる材料としては、鋼鉄材料と非鉄金属材料が一般的です。
鋼鉄材料といえば軟鋼やステンレス鋼、非鉄金属材料といえばアルミニウムとその合金、鋼とその合金が代表的です。
□さまざまな曲げ加工
一言に曲げ加工といってもその種類はさまざまです。
ここでは4種類の曲げ加工について紹介します。
1つ目は、型曲げです。
こちらは先ほど曲げ加工について紹介する際に代表例として説明させていただきました。
突き曲げと呼ばれることもあり、製品の断面形状によって「V曲げ」「U曲げ」「L曲げ」「Z曲げ」「R曲げ」などがあります。
2つ目は、押さえ巻き上げです。
こちらは材料の縁を抑えながら折り曲げる加工方法です。
加工の際には、フォールディングマシンなどのプレス機械を使用します。
型曲げと比較すると、加工キズがつきにくいという特徴があります。
3つ目は、成型加工です。
こちらは材料を曲線的に曲げる加工方法です。
曲げ加工ではありますが、絞り加工の要素も含まれています。
4つ目は、送り曲げです。
こちらは材料を送りながら「回転ロール」を押しあてる方法です。
送り曲げでは、材料を型に固定することなく、ラインの中で順次前進しながら連続的に曲げ加工を行っていく技法です。
3本のロールを用いて曲げを行う加工を「ロール曲げ」、複数組のロールにコイル状の素材を通し連続的に曲げ加工を行うものを「ロール成形」といいます。
大きな半径で単純な円断面を描くものから、より複雑な断面形状の実現まで幅広く活用できる技法です。
□曲げ加工の設計、図面における限界と注意事項について
設計時や図面において注意する必要があるのは以下の3つです。
・最小曲げ半径
・展開時の寸法
・曲げ部と穴の距離
以下で詳しく解説しますね。
曲げ加工というのは、素材の内側部分が圧縮され、外側部分は引き伸ばされています。
内側部分が素材の中で最も最小の半径になるので、「最小曲げ半径」と言われます。
外側部分に関して言えば、素材が引き伸ばされているので、本来の寸法よりも長くなる傾向があります。
これが大きな問題を引き起こします。
例えば、部品を組み立てる場合を考えてみましょう。
寸法が変わるということは組み立て時にうまく噛み合わないということが予想されます。
そのため、外側のふくらみを考慮して設計する必要があります。
具体的には、板厚のおよそ15パーセントがふくらみにより増える寸法の目安とされています。
曲げ加工前と曲げ加工後で寸法が変わらない部分があります。
これを中立面と言います。
中立面は基本的に板厚の中心部分になります。
しかし、必ずしも板厚の中心であるとは限らない点には注意してください。
上記で、材料には引っ張られる部分と圧縮される部分があることを紹介しました。
これが原因で、曲げ部の近くの穴が変形することがあります。
設計段階から考慮しておくことをおすすめします。
曲げ部と穴の距離に関しては、以下の公式を最低基準として考えると良いです。
・曲げ部から穴までの距離=曲げ半径R+板厚×1.5
上記の式を計算して出てきた結果よりも近くなると、穴が変形する可能性が非常に高いです。
公差の穴の場合は、+1.0開けておくとより安全でしょう。
□まとめ
今回は、曲げ加工が何なのか、設計・図面における限界と注意事項について紹介しました。
曲げ加工にはさまざまな種類があることをご理解いただけたでしょうか。
難しい加工なので紹介した3つの注意点を参考にしながら作業を進めてみてくださいね。
そのほかわからないことや相談したいことがある方はお気軽に当社までご連絡ください。