映画やドラマで刀鍛冶が真っ赤になった鉄をハンマーで叩いて水をつけるシーンを見かけたことがある方はいらっしゃるのではないでしょうか。
その動作のことを熱処理と言います。
金属材料を変形させることによって性質を向上させる働きがあります。
今回は熱処理の概要や種類について解説するので理解を深めてください。
□熱処理とは？その概要についてご紹介
熱処理の定義としては、「赤らめて冷やすこと」です。
金属が赤くなるまで加熱して黒くなるまで冷却する一連の操作のことをイメージしてください。
この「加熱」と「冷却」を加えることで形状が変化しないように性質を向上させていきます。
意図的に行っているため、性質を悪くするわけではないです。
加熱後に冷却を急激に行うことによって金属材料の性質として硬度を高められます。
そして、「強度」「粘り」「硬度」「耐摩耗性」「耐食性」「被削性」などの向上が期待できます。
塑性加工や切断などの金属加工の一種に分類され、熱処理は金属の内側に働きかける加工と言えるでしょう。
□熱処理の種類をご紹介します！
大きく分類すると「全体熱処理」と「表面熱処理」があります。
中でも全体熱処理は素材全体を変態させます。
そして、その中でも「一般熱処理」と「特殊熱処理」に分類されるのです。
ここでは、一般熱処理の概要について解説していきます。
＊焼き入れ
金属を硬くするための処理として焼き入れがあります。
変態温度以上まで加熱を行い急冷して組織を変化させます。
まず、金属を加熱してオーステナイトに変化させます。
その後、急速冷却してマルテンサイトが形成後に金属結晶が小さくなります。
焼入れ後は硬化しますが、粘りはなくなり脆い金属となります。
なお、焼入れは水で冷却する「水焼き入れ」、油で冷却する「油焼き入れ」、高周波の電磁波によって電磁誘導を利用する「高周波焼き入れ」があります。
＊焼き戻し
金属を粘り強くする熱処理で、焼き入れで脆くなった金属を元に戻すことから焼き戻しと呼ばれます。
基本的に焼き入れとセットで行われます。
焼き戻しは用途に応じて「低温焼焼戻し」と「高温焼戻し」があります。
低温焼戻しは硬度を優先する方法で、鋼の場合は約200℃で熱処理を行い再冷却をします。
高温焼戻しは粘りを優先する方法で、鋼の場合は約650℃で熱処理して再冷却します。
＊焼きなまし
金属を軟化させる熱処理で、加工前に金属を柔らかくさせることで加工性を向上させます。
金属の切削加工を実施する際には、切削がしやすい鋼が理想と言えるでしょう。
理想の鋼にするためには熱処理が欠かせないのです。
素材の変態温度以上まで加熱す熱を加える炉の中で冷やす炉冷を行います。
また、焼きなましの他の目的としては、組織の均一化が挙げられます。
組織の不均一さは加工むらや機械加工に適さないなどの原因になります。
加えて、曲がりや反りが生じたり、焼入れした場合の硬度にばらつきがでたりするでしょう。
＊焼きならし
金属組織を整え、歪みが生じる鉄鋼製の部品均一化を図るために用いられることが多いです。
変態点よりも高めの温度で再加熱して空冷することで結晶粒が微細化します。
そして、靭性などが向上して残留応力が除去できるでしょう。
金属を加熱してオーステナイトへ変化後に、空気中で冷却して不安定な金属をもとの性質に戻すことが可能です。
ここでは、一般熱処理について解説しました。
硬度等の機械的な性質調整をするのが「焼き入れ」と「焼き戻し」です。
これらの熱処理は、鉄鋼製品等の工具などに欠かせないものとなっています。
特殊熱処理との違いとしては、一般熱処理は加えた材質をさらに改善する目的のもと採用されます。
□相変化が起こる変態温度とは？
熱を加えて相変化が起こる温度のことを変態温度と言います。
そして、この変態温度が金属に性質が安定に維持され続ける温度範囲で生じる際には、変態が開始後終了する際の温度のことを変態温度としています。
前項では熱処理の種類について解説しましたが、それぞれの性質向上の目的が異なります。
金属材料は約700℃の熱が加わることによって赤くなります。
そして、赤く色付くタイミングで結晶構造や性質に変化が現れます。
この変化が変態温度と言います。
金属材料が赤くなるまで熱を加えて急冷することで金属材料は硬度が増します。
焼き入れ後の金属材料は、脆い状態です。
そのため、再度熱を加えて強度のある素材に仕上げていきます。
熱処理には様々な種類や用途があるため、加工したい目的によって種類を選択することが大切です。
その際は、「硬度」「切断したいか」「削りたいか」「歪みがない金属にしたいか」などの観点で判断してください。
□まとめ
今回は、熱処理の概要や種類について解説しました。
熱処理は、金属の強度や硬度を向上させるための処理として有効です。
「焼き入れ」や「焼き戻し」などのそれぞれの用途にあった熱処理があるため、把握しておきましょう。
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